2003年6月某日
■腕を使わないことが飛ばしの秘訣
肘から先をロックして、右肩周辺からテークバックを開始し、前傾姿勢を保ったままトップを作り、飛球線と交差した左肩を、飛球線と平行になるように動かすだけでスクエアなボディターンスイングが完成するという理論に、多くの反響をいただいています。「飛ばそうとはしていないのに、勝手にボールが飛んで行く」といううれしいご意見が多い一方で「スイングがシンプル過ぎて物足りない。腕を振ればもっと飛ぶのではないか」というご意見もありますので、もう少し詳しく解説してみます。
ヨシムラのボディターン理論は、肩の回転というか、左右の肩の入れ替えが、身体を回転させ、その遠心力でクラブを振ろうというもので、ヘッドと身体の間にある腕は、その遠心力で十分に振れており、あえて、腕を使う必要は無いのです。しかし、このスイングでは、力自慢のパワーヒッターには、どうしても振った気がしないようで、必要以上に腕を動かしてしまい、結果、グリップの先行を招いてしまいます。
どうしても腕を振りたいというのなら、トップで切り返してからクラブがプレーンに乗るまでは絶対に腕を使わず、インパクトの直前からクラブの動きに合わせて振り出すべきなのですが、これでグリップを先行させずに方向が保てるのは、日本の超一流プロレベル(後述)で、我々には無理で、アメリカのプロもこういう器用なスイングは出来ません。普通にスイングすれば、遠心力によって、ヘッドは内から外へ出ようとします。これをインサイドインの正しい軌道にするには、決して腕を使ってはいけないからです。では、どうしても動きたがる腕を制御するにはどうすればよいのか。
ダウンスイングでグリップを右腰の前、右太腿の付け根あたりに引き付けることで正しい軌道が描けます。振るのではなく、その場に引き付けておくのです。以前に述べた、ダウンスイングでの肘の引き下げをより明確に行なう訳です。腕の力を、クラブを振ることにではなく、グリップをその場に引き付けておくことに使って欲しいのです。この引き付けがないと、クラブを立ててのインサイドインの軌道にはなりません。よく「左腕リード」という言葉を耳にすると思います。言葉だけ聞くと、飛球線方向に左腕を放り出すようにイメージしがちですが、これだとクラブが寝てグリップが先行し、スライスとチーピンの繰り返しになります。「左腕リード」の本当の意味は、左の脇を締めて、左腕のリードで、クラブを立てたままグリップを右腰前、右太腿付け根付近に持ってくる動きのことを言うのです。
この引き付けができると、シャフトの弾きやしなり、ねじれなどがわかるようになります。あとは身体の回転のスピードでHSを上げていけば良いのです。引き付けをマスターするには、ボールをドライバーの位置において、7Iで20~30度左方向にクリーンヒットのボールが打ち出せるようにする練習が効果的です。コレが打てるようになったら、ボールを右足のかかと延長線上に置いて、5Iで低目のフックボールで170ヤード飛ばせるように練習しましょう。どちらもマスターできれば引き付けの完成です。
■腕が使えるのはごく一部のトッププロだけ
ちなみに、肘から先を完全に固定して、決して腕を使わず、身体の回転だけでボールを飛ばしているプロは、タイガー・ウッズを筆頭に、日本ではJCBで勝った友利勝利、杉原輝雄プロが双璧で、藤田寛之プロもこの流れに入っています。アメリカで活躍する日本人プロは、正確さに加えてより一層の飛距離を稼ぐために、遠心力によって振られる腕をインパクト直前からググッと加速させるスイングで、これが今のところ日本人にとって最強だと思いますが、アマチュアにはとても真似が出来ません。丸山茂樹、田中秀道、片山晋呉、谷口徹プロといったトッププロがこのスイングで、新人の宮里優作もこのタイプ。丸山、田中はアメリカでプレーするようになってから、手首を完全にロックしたスイングになっています。日本のプロに多いのは、インパクトまでは肘から先をロックしているのに、インパクトで手首のターンが入るタイプです。深堀圭一郎、鈴木亨、宮本勝昌、宮瀬博文プロなどで、フェースローテーションによって、ボールが強くなりすぎるので、やや方向に難がでてきます。
伊沢利光プロは、インパクトで重心がやや左サイドに移動するため、ヘッドが遅れてフェードボールになっているのですが、強烈な腹背筋と全身のパワーで距離を獲得しています。尾崎将司プロは、右足の前で綺麗にインパクトする理想的なスイングですが、軌道がアッパーなのでドローしやすいのに加えて、最近ではインパクト以降に身体が浮き気味で、飛距離、方向ともに苦しくなっています。
また、アメリカのトッププロでは、ラブⅢ、エルス、プライスなどのように、太くて長い腕の動きに合わせて身体を回転させているプロが多いようです。身体の遠心力に合わせていては長い腕を持て余してしまうからでしょう。日本では細川和彦プロがこのタイプです。いずれにしても、すべてのプロは、肘から先をしっかりとロックさせ、無駄な腕の動きを制御していることを理解して欲しいと思います。
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